2011年3月アーカイブ

可能性。

東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチ 日本代表 2 - 1 J選抜

やはり色々と、想いが深くなるような試合だった。
ゲームとしては前半と後半でややクオリティに差があった感は否めず、そういう角度で論ずるのもサッカーの見方であろうけれども、そのような観点の指すものによって冷やされるほど、このゲームの熱量は小さくなかったな、と思う。

ザッケローニの敷いた3-4-3の布陣は、今後の代表の方向性について、ひとつの明確でポジティブなチャレンジだったと思う。
特に中盤の4人、長友・長谷部・遠藤・内田という構成は、色々な意味で「日本らしさ」を強く意識させるものだ。それにしても遠藤の凄さか。鮮やかな直接FKももちろんなのだが、欧州組で構成されたユニットの中においてさえ、キープ力・展開力・アイデアが際立っている。他の誰とも替えが効かないという点では心配の種とさえ言える。
ただ前線の3枚を考えると、本田と前田であればどちらか1人で良いのでは、という気はしなくもない。個人的には前田のサイズに似つかわしくない軽やかなプレーというのが好みであるけれども、国際試合として考えると本田をセンターにおいて両翼を配する方が合理的には思える。岡崎も相変わらず良い。香川の復帰の状況次第でまた構成に変動は出るだろうけれど、2シャドーには若手にも面白い人材がいる。宇佐美しかり、永井しかり。ひょっとしたら宮市などの名前も挙がってくるかも知れない。色々と競争が出てくる事を期待。
逆に懸念材料としては3バックの構成、という事になるか。個別に広いエリアをカバーする機動力と強さを兼ね備えていないと、戦術的にはなかなか苦しいものがあるなぁ、という気もする。今野・吉田・槙野といった組み合わせもあるのかも知れないが、ここはしばらく試行錯誤しそうな予感がある。
前半、特にパスゲームの質において、代表はJ選抜を完全に凌駕した。この3-4-3をどう煎じ詰めるのか、あくまでもオプションに留めるのか、いずれにせよ楽しみが増えたな、という感じはした。

そして後半。
語る事はひとつしかないのだろうな。いや、あるにはあるんだけど、くっきりと思い出せる事がひとつしかないよな、と。

カズ。

ああ、すげえな、と。本当にすげえな、と思う。
1994年、あのジェノヴァダービーで挙げたゴールを思い起こさせる。
ヘディングの落としに反応して裏へ抜け出し、ゴールキーパーの左を抜いて、右のサイドネットに流し込んだ、あのゴールだ。
17年!もうそんなに経ったのか。
それにしても日本代表から日本人選手が得点するなんて、オフィシャルな試合ではいつ以来だろう。85年キリンカップでの読売クラブvs代表での戸塚哲也以来、という事はあるまいか。その試合では1-0で読売が勝利し「こんなに後味の悪い勝利はない」と選手達がもらしたと言うけれど、今回はしっかりと代表が勝利を収めた。でも将来、みんなが思い出すのは、ゲームの結果ではなく、やはりカズのゴールという事になってしまうのだろう。
日経のこのコラム。『生きるための明るさを』
こうした文章に滲む彼の「バランス感覚」は、ある意味でスポーツ選手らしくないとさえ映る。
いくつもの挫折と、苦闘と、努力と、継続と。そこから得た人生観なのだろうと理解はできるけれど、自分に置き換えて、そんな気持ちは持てるのだろうか、と問えば、やはり無理だな、と思わされる。
「カズの凄いところは、『持ってる』とか『スター』とか、そういう事よりも、今まで諦めずに続けてきた事だよね」と奥さんが言った。
そうなんだよね、と僕も思う。
執念、とも違う、どこか無邪気さを秘めた、プライドの高さを感じる。

「今さらカズかよ」「客寄せパンダかよ」と笑われる事は百も承知で、それでもピッチに立つ。どこかで疎まれている自分を意識しないはずがない。なのに、厳しい節制と自己への規律を課して、ひたすらにサッカーに挑む。今さら、挑む。

そうやって生み出されたゴールが、人の気持ちを動かす。
「心が震える」って、こういう感じか。

川口から前線へと出されたロングフィードに対してトゥーリオが岩政に競り勝つ。そのこぼれたボールに抜群のタイミングで反応して、ディフェンスラインのギャップを突き、裏へと抜け出る。視線と、わずかなシュートフェイクでずらし、キーパー東口の左肩口を柔らかく射抜く。
一直線にゴール裏へと向かう黄色に紺字の背番号「11」。
軽やかなカズダンスのステップ。夜空を突き刺さんばかりに力強く掲げた右手の人差し指。

ああ、すげえよ。やっぱすげえ。
日本代表からゴールを奪う44歳がここにいたよオマエラ。
ちゃんと見とけ。そして一生、忘れるな。

EURO SPORTS Live のコメンテーターはさらっと呟いたそうだ。
" National Treasure , MIURA." ミウラは国の宝だ、と。

この災害によって、本当にたくさんのものが失われ、今もまだ失われつつある。
ただそれでも、手の中に可能性は残っている。
サッカーで人は救えないかも知れない。
でも心の奥のほうに落っこちてしまっていた楽しさや喜びを思い出して、エネルギーにして、日々を乗り越えていく事は出来る。
どうやったって不安感は拭えない。拭えるような性質のものでもない。でもそんなもん、他人の責任に押し付けてギャーギャー喚いても、あるいは「復興支援」や「自粛」や「同情」や「犠牲」に仮託しても、自分の無力さにただ疲弊していくだけだ。心を削り取っていくだけだ。
そんな事より、まずやれる事をちゃんとやろう。誰かと一緒に仕事して、勉強して。とりあえず、一生懸命に。勝利か敗北かは二の次にして、心に情熱を吹き入れて、とにかく自分にできることを、ただあきらめずにやっていくしかないんだと。
そうやって、日常を前進させていく事だけが、僕らに出来る最善の事なんだと。
それはサッカー選手も僕らも、変わりないはずじゃないかと。

あらためて、そう思う。

何を書いたものか。

まずこの度の大震災で被災された方に、心よりお見舞い申し上げます。

震災後、こうした状況にあって、「何かを記しておこう」という気持ちそのものはあるのだけれど、さて、何を書きたいのか、というと、良く分からない。

テレビや新聞やウェブ上に広がっている悲惨な情報の山に、ただ言葉を失う。
福島の原発情報を見つめながら、そこで戦い続ける人たちの事を思うと、胸が詰まる。

自分に何ができるか、などと考えもしない。
「何かできることがあるはずだ」という思いさえ、傲慢に思える。

地震のあった日、車で走っていた僕は、その大きな揺れが収まったあと、すべての事を思考の枠外において、ただ家族の無事だけを確認しようとUターンした。
幸いにして親族に怪我をしたものもおらず、ホッと胸をなでおろしはしたが、しかしそれは本当に、自分の身の回りの話であって。

その日を境に、流れてくる情報は、焦燥感ばかりを掻き立てる。
気持ちを整理するためにも、情報を吟味し、自分の中で整理し、未来の可能性を並列化する。

あと出来る事は祈るだけ。

祈り、という行為は、「超越した何か」を蝶番にして、他人と僕とを隔てる。
「他人事」に分離する。
自分とは違う命を、自分よりもっと優れた何かによって守って欲しいと。
そうしなければ、人は苦しむ。ただ知らぬ人の命を思って。

息子はもうすぐ、生後7ヶ月になる。
お風呂が大好きで、「お風呂に入るよ」と声をかけると、喜びの声をあげる。
それは親の欲目なのかも知れないけれど、ただ楽しそうに、湯船の中ではしゃぐ喜びを満喫しているように思える。

そういう事が本当に幸福な事なのだと、あらためて理解する。
ほかほかと温まった息子を抱きしめながら、その瞬間を慈しんで、せめてこの幸せを我が子に手渡してあげたいと願う。
それ以上の何も出来ない、という仄かな無力感と共に。

良い未来を、せめて希望ある未来を、次の世代に見せてあげたい、と思う。
そのために、日々ただ地に足をつけ、日々ただ働こうと思う。
サッカーを愛する人として、サッカー界が何か為そうとするなら、わずかでもその手助けをしたいとも思う。
わずかばかりであれ、募金もしようと思う。

とりあえず、自分が自分として、きちんとやれる事をやろう、と。
今はただ、そのように思う。

やはり、何も書けてないな、と文末に添える。

2011年Jリーグ開幕したというので

とりあえず何か書き出してみるべかな、というような。
と言ってもあれです、今日は一日忙しくて、各所の開幕戦はほとんど見られなかったっす。明日も多分、見られないと思われます。
あ、トヨタと日産の試合は少し見ました。ええ。日産、意外と良いじゃない、ぐらいの感想です。最後に引き分けだったみたいですけど。

そのようなわけで、ヴェルディに関する個人的な展望というか、「このへんどうでしょう」ぐらいの感じを、ここまでの練習とかTMとか見た感想として残しておいて、シーズン終わってから自分の眼力のなさを恥じるという恒例の行事に移りたいと思います。

・全体的に
ここに来て主力にちょっと怪我人が出ている模様で、そこが最大の懸念材料。ただ選手層の積み増しがあった分、昨年と比較しても大きなダウングレードは心配しなくて良さそうかな、というのはポジティブなところ。序盤戦に我慢して取りこぼさないという辺りは求められると思うけれどもね。
ディフェンス陣は昨年から大きく変更がない分、計算は立つ。アタック陣も今年の中核になるであろう、平本、河野、マラニョンのセットが良い状態でシーズンに入れそうなので、まあ後は頑張って結果出してください、ぐらい。この3人で35点ぐらい計算できたら、昇格ラインに乗ると思うのだけどね。
何か巷ではバランス悪いとか、あんまり評価の高くないような補強方針に思われてるみたいなんですけど、個人的には割と納得感があるんだけど。少数派かも?
前提として、昨年の問題は決定的に得点力がなかった事。昇格を狙うのであれば、どう計算してもあと15得点、できれば20得点の上積みは必要で、そうなると、競争させながらアタッカーのバリエーションを増やす事が最もプライオリティが高くて当然だろう、と思ってたわけで。昨年、結果として誰も河野と平本のポジションを脅かせなかった、というのは「非常に大きな問題だ」と僕は捉えてるので。そこは絶対に適度な競争が必要。
ボランチについて触れると、チームの「下限」を決めるにはボランチの質が必要だけど、同時に「上限」も決めてしまうことがある。晃誠がいたことでむしろチームの得点力が低かったのかも知れないなんてな逆算的な思考というか検証はあってもいいぜ、という逆張りな言い方も出来る。もちろんデカイ穴が開いたのは間違いないけど、同じ形の何かを持ってきて埋めるよりは、形を変えてチームが伸びる埋め方を模索するのも補強のありようだろうと。
なので、しっかりと準備期間を持った上でアタッカーに重点を置いた補強方針を採った、というのは割とポジティブに捉えて良いと思っている。

・新加入選手について
今のところ、深津の評価がだいぶ上がってきている模様。見た範囲で人に対して強い、前に強い、というタイプなのは分かる。そこはとても良い。問題は受けた時、早い判断が必要な時に少し雑というか、慌てたプレーが出やすいのが難点かな、と。ただ深津が戦力になってくると選手層という面でも戦術面でもバリエーションが出るので頑張って頂きたく。
森は能力的に十分なので、コンディション面だけの問題。起用法はシーズン通して多少の変更がありそうな気配はする。
市川と平繁については技術的にもしっかりしてるし、スピード上げた中でも質の高いプレーが出来てるけれども、スペシャルな何かがあるようにはまだ思えないので、アポジらの起用法との兼ね合いは出そう。
マラニョンはコンディションも上げてきているし、まずまずフィットしてきているので、最初は多少もたつく感じがあるだろうけれども、ケガなくシーズンを過ごしてもらえれば十分に成果は期待できそう。
喜山とキムはまだ若手と競ってる状態かな。

・ボランチユニット
まあ今シーズン、晃誠が抜けた事で一番の懸念材料がここになるんだろうけれども。佐伯もちょっと怪我持ちなので、通年での計算がしづらいのは苦しいところ。
話題になってるのは飯尾の起用だけれども、むしろ菊岡もボランチに起用している点についてももっと注目が必要だろうし、評価や判断はシーズンの中で明らかになっていくのかなぁ、と。
飯尾のボランチについては、ここまでのところ「それほど悪くないかな」とは思っていて。何と言うか、晃誠が抜けたからには「晃誠の代わり」を探すのはほとんど意味がないというか、晃誠のプレーは彼にしか出来ないものだし、仮に彼よりレベルの高い選手をそこに据えたとしても、要はチーム全体をそこにフィットさせていく作業が必要になってくるので、そういう意味では必ずしも短期的には戦力アップにつながらない可能性もあるだろうし、もっと言えば「似たタイプ」の劣化バージョンを据えても、それはチームの戦力の絶対値を下げる事になりかねないよと。であれば、少し「味付け」の違う組み合わせで、かつチーム全体の事を良く分かっている選手を起用するというのは、短期間で纏め上げるという意味でも、それほどおかしな判断にも思えない。
飯尾がボランチに向いてるかどうかはともかく、彼の良さはプレッシャーがかかった状態でもボールをしっかり保持して前を向ける事、左右両足で質の良いキックを持っていること、機動力があり、かつ重心が低く、コンタクト負けしにく守備ができること、声で周囲を動かせること、パスを前線に「付ける」ときに、自分のフィニッシュまでイメージできてること、という辺り。むしろそういう良さを彼自身がどう生かすか、また周りが生かしてあげるか、というのはチームの成長と考えれば、ひとつの見所であろうと。
また菊岡は「パサー」的なイメージは強いけれど、個人的には飯尾よりもさらにアタッカー向きの選手なのかな、と思っていたり。というか、飯尾よりも躊躇なく「リスクの高いプレー」が出来るな、と思っていて、それは菊岡の長所でもあるし、同時に欠点にもなり得ると。だから菊岡の方が、むしろボランチに下がったときに、自分なりのバランス感覚という点では苦労するかも知れないな、と思っている。飯尾ほどのスピード感はないけれど、飯尾よりもパスの種類や質では良いものを出せているので、そこら辺の兼ね合いかな、と。
で、この2人でドイスボランチを組むというのは、今のところ十分にありうる模様。ただしボランチに起用できそうな選手は他にも複数いるし、シーズン通して戦う中で伸びてくる選手がいれば競争になってくるだろうけどね。

・戦術的なバリエーション
深津が計算できるようになった事で富澤をアンカーに置くプランもある模様。こちらは4-3-3ないし中盤をダイヤモンド型とした4-4-2という形で想定しているのだろうけれど、これは守備的布陣というよりむしろセットプレーの高さまで考慮に入れた上での攻撃的なオプションのようにも思える。サイドバックに高橋を起用すれば平本を加え4~5人で高さを出せるし。ちょっとプライオリティまでは分からない、というのは、この布陣だとやや前後に分断しやすいのではないか、という懸念があるからで、監督の判断を見たいところかなぁ。
前線の組み合わせは増えたし、1、2、3トップいずれの形でもそれなりには戦えそう。ただ、マラニョンが動きやすい形を優先して考えてあげた方が良いのかも。平本はそれなりに周囲に合わせてプレーできるしね。むしろ2列目との組み合わせが重要って事になるか。

・ルーキーとか若手とか
ノビノビやっててよろしいな、と思っているが、特に高橋の積極性が目を引いてる。昨年は本人としても不本意なところがあったんだろうし、監督にもだいぶ怒られているようで、目の色が違う感じ。飛躍のシーズンになってくれると良いけどね。ポジション争いで苦しくなった和田が元気ないかなーとか思っているが、ここが踏ん張りどころだよ。
成立学園から加入の竹中は、サイズ、強さ、柔らかさといった素材の部分は良い。プロのスピードに慣れるのが先決だろうけど。
キローラン兄弟も、やはり長くクラブにいて離れしており、物怖じしてないし、良く声が出てる。まだまだだけど、大器ではある。
国士舘から加入の新井は、ハッキリ言ってだいぶ雑だが、素材としては非常に面白い。シーズン中にベンチ入りはありそうだな、と。

・個人的に注目
まず井上平。勝負のシーズンだと言うのは本人も分かってるだろうし、意識も高い。それを結果に結びつけるのは楽な話じゃないけど、それを嫌というほど味わった昨シーズンを糧とできるかどうか。
次に小林祐希。もちろん、ポジション取るのは楽な話じゃないし、起用法もまだ見えてない。ポテンシャルはあるが、それだけで終わった選手も山ほど見てきた。来年があると思わず、毎日を大事に、1つのチャンスにしがみつく気持ちを見せるかどうか。
そして高木善朗。チームの軸として期待されるシーズン。もちろん、相手からのマークも厳しくなるし、思い通りにいかない場面も増えるだろう。ある意味で兄が同チームにいたことで楽をさせてもらってた部分もある。色々なストレスと向き合うシーズンになるだろうけれど、そこを乗り越えられるかどうか。
それから河野広貴。まあ、出せるものを全部出せ、出し惜しみすんな、という感じ。賢く、かつアグレッシブに戦う事を求められる。
最後に喜山康平。小学生時代からずっと注目してきた選手だけに、ここはもう、単純な期待。がんばれ。とりあえず結果出せ。

大体、そのぐらい。
今年も頑張りましょう。

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